建設現場や修繕工事では、作業員の安全を確保し、効率的に作業を行うために「足場(あしば)」が設置されます。足場は、建築物の外壁や高所での作業を支える仮設構造物であり、作業者が安全に移動したり、材料を運んだりするために欠かせない設備です。
しかし、一言で「足場」といっても、実際にはいくつもの工法や構造に分類されており、現場の条件や施工目的によって採用される種類が異なります。この記事では、建設業や仮設資材に関する基本知識として、代表的な6種類の足場を中心に、それぞれの構造や特徴を体系的に整理して解説します。
足場とは
普段工事に親しみのない方は、そもそも、「足場とは何かわからない」という方も多い場合もあるのでしょうか。
足場とは、建設現場や解体現場などで、作業員の作業床や通路として設置される仮設構造物のことです。主に鉄パイプ(単管)や鋼製部材、木製板などで構成され、建物の外側に組み上げることで高所での作業を安全に行えるようにします。
足場は単なる作業台ではなく、「作業床」「手すり」「筋かい」「支柱」「布材」など複数の部材によって構成され、一定の強度と安定性を持つ構造体です。日本では労働安全衛生法および同施行令、さらに「足場及び作業構台等構造規格」によって設置基準が細かく定められています。
工法別 足場の種類 6分類とは
足場は、設置の方法や支え方の違いによって複数の種類に分類されます。代表的な6種類の分類は次の通りです。
- 一側足場
- 本足場
- 単管ブラケット足場
- 吊足場
- 棚足場
- 支保工足場
それぞれの工法は、建物の高さや規模、作業内容、施工スペース、安全基準などの条件に合わせて使い分けられます。さらに現代では、「枠組み足場」や「くさび緊結式足場(ビケ足場)」など、規格化され効率と安全性を高めた工法も広く普及しています。
ここからは、各足場の特徴を順に解説します。
一側足場とは
一側足場は、建物の壁面に沿って片側のみに支柱を設置する足場で、十分な敷地スペースを確保できない狭小地で多く採用される工法です。支柱が片側のみのため、部材点数が少なく設置コストを抑えられる点がメリットで、小規模補修や短期間の作業に向いています。
壁側にアンカーで固定して安定性を確保する場合が多いですが、両側に支柱を設ける本足場と比べると強度・作業性は劣ります。高層建築や長期工事には適さないため、施工目的と現場環境を慎重に判断して選定される足場です。
- 建物に沿って片側のみに設置する構造
- 設置スペースが狭い現場でも対応可能
- 材料点数が少なく、比較的低コスト
- 安定性は両足場に比べてやや劣る
- 高層や長期工事には不向き
- 使用される部材例:単管パイプ、布材、クランプ、作業床板(足場板)など。
本足場とは
本足場は、建物の外周に両側から支柱を設ける工法で、最も安定性・強度に優れた足場です。作業床の幅を広く確保でき、複数の作業員が同時に作業しても安全性が高いため、マンション、ビル、商業施設など中〜大規模の建設現場で主流となっています。
枠組み足場やくさび緊結式足場などの規格足場もこの分類に含まれ、組立・解体の効率化や安全基準の向上により普及しています。資材点数が多く施工スペースも必要ですが、総合的な安全性と作業性の高さから、最も採用頻度の高い足場です。
- 両側に支柱を設けた構造で、高い安定性を確保
- 広い作業床の設置が可能
- 荷重耐性が高く、多人数の同時作業が可能
- 資材点数が多く、コストや施工スペースを要する
- 使用される部材例:枠組み材、ジャッキベース、鋼製布板、手すり、筋かい、階段ユニットなど。
単管ブラケット足場とは
単管ブラケット足場は、単管パイプにブラケット(支持金具)を取り付け、その上に作業床を設置する足場です。単管足場の一種ですが、ブラケットを活用することで建物の凹凸や複雑な外形にも柔軟に対応できる点が大きな特徴です。限られたスペースでの作業や、通常の枠組み足場が組めない現場で多く活用されます。
自由度が高い一方で、全体の強度は本足場に劣るため、作業内容に応じて補強材を併用することが一般的です。小規模工事から補修・設備交換まで幅広く使用される、汎用性の高い足場工法です。
- ブラケットを使用して作業床を支持
- 自由度が高く、複雑形状の現場に対応可能
- 小規模・短期間の作業に適する
- 強度は枠組み足場に比べて低い
- 補強材を併用して安定性を確保する場合が多い
- 使用される部材例:単管パイプ、ブラケット、鋼製布板、固定金具、手すり支柱など。
吊足場とは
吊足場は、地上から支えるのではなく上部の構造物から吊り下げる形で作業床を設置する特殊足場です。橋梁、高層ビルの外壁、プラント設備、ダムなど、下から足場を組めない現場や地盤条件が悪い場所で不可欠な工法です。ワイヤーやチェーン、吊り装置を用いて上部から荷重を支えるため、設計・施工には高度な専門知識と厳格な安全管理が求められます。
高さ調整が容易で効率的に作業できますが、資材コストが高く、点検・管理も徹底する必要があります。特殊構造物の施工や点検に欠かせない足場です。
- 上部から吊り下げる構造で、地上スペースを必要としない
- 橋梁や高層構造物など特殊現場で使用
- 作業床の高さを調整できる
- 吊り装置やワイヤーの管理が重要
- 資材コストが高く、専門的な設計・監督が必要
- 使用される部材例:吊り装置、ワイヤー、吊りチェーン、作業床パネル、安全帯アンカーなど。
棚足場とは
棚足場は、建物の壁面や梁などに支持金具を直接取り付け、必要な部分に限定して作業床を設置する足場です。全面的に足場を組む必要がないため、部分補修、配管交換、室内作業など、短時間で済む工事に適した工法です。作業床を限定的に設置できるため施工効率が高く、移動式足場(ローリングタワー)も棚足場の一種に含まれます。
ただし、支持箇所の強度確認が必須で、高層建築や長期工事には向きません。必要な場所だけピンポイントで設置できるため、コストと時間を抑えられる利点があります。
- 建物の一部に固定して設置する構造
- 限定的な作業範囲に適する
- 設置・撤去が簡単で短期間の工事に向く
- 長期工事や高層建築には不向き
- 支持箇所の強度確認が必要
- 使用される部材例:ブラケット、鋼製布板、固定金具、手すり支柱、キャスターなど。
支保工足場とは
支保工足場とは、コンクリート構造物の施工時に、型枠や打設されるコンクリート荷重を支える「支保工(しほこう)」と、その上で作業を行うための足場を一体的に組み立てた工法を指します。スラブ・梁・床・大開口部など、自立しない躯体部分の型枠を安全に保持する役割があり、建築・土木工事の躯体施工では不可欠です。
一般の作業用足場とは異なり、荷重を受ける構造として強度計算が必要で、使用する支柱材(パイプサポート・型枠支保工材)や水平材、作業床を適切に配置して安全性を確保します。施工内容に応じて高さ調整や段組みを行う柔軟性も特徴です。
- 型枠とコンクリート荷重を支える構造体として設計され、一般足場より高強度が求められる
- 梁・スラブ・床の型枠施工に欠かせない躯体工事の基本設備
- パイプサポートや支柱材を使用し高さ調整が容易で、多様な施工条件に対応
- 作業用足場も一体化して設置されるため、上部作業を安全に行える
- 荷重計算・水平支持・倒壊防止など安全管理が厳格で専門的な設計と施工が必要
代表的な足場工法の比較
| 分類 | 主な資材 | 構造・特徴 |
|---|---|---|
| 一側足場 | 単管パイプ、布材 | 壁面片側に設置、狭小地対応 |
| 本足場 | 枠組み材、鋼製布板、ジャッキベース | 高強度・高安定性 |
| 単管ブラケット足場 | 単管パイプ、ブラケット | 自由度高く小規模施工向き |
| 吊足場 | ワイヤー、吊り装置 | 特殊構造、高所や橋梁で使用 |
| 棚足場 | 鋼製布板、ブラケット | 部分施工向け、短期設置 |
| 支保工足場 | 支保工材、水平材 | 型枠固定用 |
まとめ
足場は、建設現場の安全性と作業効率を支える仮設構造物です。本記事で紹介した6種類(一側足場、本足場、単管ブラケット足場、吊足場、棚足場、支保工足場)は、いずれも施工条件や現場環境によって適用される代表的な工法です。
また、現代では枠組み足場やくさび緊結式足場といった規格化された工法が主流となり、作業者の安全確保と効率化が進んでいます。足場の構造、材質、安全基準を正しく理解することは、すべての建設現場における基本的な知識として欠かせません。





